Supporter



「お父さん、最近買ってくるモノのセンス良いよね」
テレビ電話の画面に映る娘の一言に、虎徹は飛び上がらんばかりに喜んだ。これまで離れて暮らしている引け目から様々なプレゼントを送ってきたが、ついぞこのようなお褒めの言葉は聞けた試しがない。
「なんだぁ、楓ー。そのヘアピン気に入ったのか?」
いつも笑顔の男だが、だらしないほど相合を崩して愛娘に問いかける。楓は、先日虎徹が買って送った、シフォンでつくられた小花がブーケ状にまとまっているヘアピンを嬉しそうになでた。
「うん。学校の友達にも、大人っぽくてかわいいねって褒められちゃった。お父さんにしては上出来。ありがとね」
「そーかそーかぁ。うん、よく似合うぞぉ」
親バカ丸出しな父の表情に、楓は一瞬引いた表情をするものの、余程そのヘアピンが気に入ったのかまだ何も言わずに笑顔でいる。
「それに、この前送ってくれたぬいぐるみも。かわいかった! あれ、本物のテディーベアでしょ? 結構お金かかったんじゃない?」
「何言ってんだよ。子どもがそんな心配なんかすんな」
「もう、子どもじゃないったら。......でもありがと。大事にするね」
虎徹の瞳には、感激のあまり涙が浮かびはじめていた。本当に、娘にこんなに喜ばれたのはここ何年も記憶にない。難しい年頃になったからだと自分を納得させようとしてきたが、なんのことはない。やはり自分の努力が足りなかったのだ。
とは言っても、最近の贈り物は虎徹だけで選んだわけではない。最近、心強い協力者が現れ、そのサポーターの力により今、娘の笑顔とお褒めの言葉をいただけているのだ。
サポーター頼りのプレゼントが果たして努力かは意見の分かれるところだろうが、とりあえず虎徹はサポーターに感謝の祈りを全力で捧げた。
神様。あいつと出会わせてくれてありがとう。
「ーーで、誰にこのプレゼント選んでもらったの?」
楓の鋭い突っこっみに、虎徹の祈りは中断された。
「え? いやあ……あはは。もちろん、パパが」
「当ててあげよっか」
父の言葉をはとりあえず無視の方向らしい。虎徹は生来嘘が下手な質だが、娘の一言には度肝を抜かれた。
「え、当てるって・・・」
「この前会いに行った時に思ったんだけどさ、お父さん、交友関係そんなに広くないよね。それで、わたしのこと知っててプレゼント選びに付き合ってくれて、センスの良いひとなんて・・・」
「え、あの、え。マジ?」
別に彼女とはやましい関係じゃない。ただ、彼女の善意でプレゼント選びに付き合ってもらっただけだ。図らずもデートみたいになってしまったけれど。彼女だって「休みの日におじさんと過ごすなんて、あんまりだわ!」とか言ってたから、お互いに変な感情はないはずだ。
けれど、娘の方に年齢が近い年下の彼女の、言葉とは裏腹に機嫌の良さそうな笑顔を見て、かわいいな、と感じてしまったやましさもあったりして。
ちょっと複雑な男心を、娘にだけは悟られたくないんですけど。
虎徹は心底あたわたとして、いやそのあのと、わけのわからない声を上げた。そんな父の様子を楓はにんまりと笑ってやって、人差し指を父に突きつけた。
ヤバイ。いよいよヤバイ。って、何がヤバイんだろう。

「ずばり!

バーナビーさんでしょ?」

「…………は?」

「だって、お父さんバーナビーさんの相棒なんでしょ? やっさしーバーナビーさんだもん。お父さんのセンスの悪さを見て、わたしがかわいそうになって一緒にプレゼント選んでくれたんでしょ。ね?」
「あ、あああ…………。……ああ、そ、そうなんだ」
「やあっぱりー! 今度お礼言っておいてね」
「・・・・・・おう」
自分の予測(というか、願望)が的を射ていたことにご満悦の笑顔を見せて、本当に珍しいことに、楓は笑顔で「お父さん、バイバイ」と可愛らしく手を振って電話を切った。


虎徹はなんだか緊張していた身体からだらりと力を抜いて、大きなため息を吐いた。

・・・今度、カリーナに謝っておこう。



「Supporter」 Closed.

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