マックスくん、絶交する



めのまえで、ほのおがもえています。

* *

マックスくんたちは、ただもえるほのおを見つめています。マックスくんのしろいけなみが、だいだい色にうつります。
いっそ、おなじほのおにとびこみたい。

マックスくんは、まっかにはらしたおめめから、またほろほろとお水をこぼします。
マックスくんをだきしめたアンナ嬢のひとみもまっかです。口からは、なんども悲鳴のようなさけびをもらしています。まるで、きがふれてしまったみたい。
「いや、いやあ!! ジャンヌ! 魔女でもいいから生きなさいよ! あんたなら、ほんとに魔女でも驚かないから!! ジャンヌ! バカ娘!!」
しだいにその悲鳴は、嗚咽にかわっていきます。
そして、ほのおがきえたあとには、なにものこっていませんでした。

――なにも。


るおおおおっ!!


マックスくんは、マックスくんになってはじめて、獣のこえをだしました。

ゆるさない、ゆるさない!!

そう叫んでいるようです。

そんなマックスくんをみて、しかばねのようにかおを青くしたジャン・ジャック=ピエールがつぶやくようにいいました。
「人間が憎いよな。わかるよ」

るおおおおっ

「でも、これだけは、覚えててくれ。

――ジャンヌも、人間だったんだ」

マックスくんは、あかいおめめをジャン・ジャック=ピエールにむけます。

「俺や、アンナや、ジル将軍も…みんな、人間なんだ」

いつか、忘れてもいいから。そんな人間もいるんだと。

ジャンは、まるでじぶんにいい聞かせるようにくりかえしました。
でなければ、じぶんさえ呪ってしまいそうなのでしょう。
マックスくんは、アンナ嬢のうでからとびだしました。アンナ嬢は、こえもあげず、ただそこにたたずむだけです。なんのひかりもやどさないアンナ嬢を、ジャンはただだまってみつめるだけでした。



「ゆるさない」
マックスくんは、かつてなかよしだったシャルルくんに、そういいました。シャルルくんは、かなしそうにひとみを伏せます。
「し、しかたなかったんだ。彼女にこれ以上頼ったら、国がバラバラになるところだった」
「さきにあのこをたよったのは、きみです」
「そうしなければ、ぼくは…」
「ころされていたかもしれません。それをたすけてくれたのがジャンヌです。それをきみは…!」
「っ…もう、僕はこの国の王だから…!」
「だから、ひつじかいのむすめさんのいのちなど、もののかずにもはいらないのですね」
「そうじゃない、そんなんじゃ…」
「かのじょは、たとえみんなしぬようなじょうきょうでも、あきらめたりしなかった。ぜんいんいかすと、わらっていうのです。かのじょは、ほんもののえいゆうでした。――この国の、王にも勝る」
マックスくんは、赤い目でシャルル王を眺めます。とてもとても、苛烈な怒りが宿っています。
「こんな国、滅びてしまえばいい。ぼくが、滅ぼしてしまいたい」
怒りには、絶望と哀しみが滲んでいます。シャルル王は、こんなマックスくんを見たことがありません。
今、王ははっきりと悟りました。

目の前の赤い瞳の獣は、化け物なのだと。

王は唇を震わせて、後退りました。
これに殺されると、確信したからです。
しかしマックスくんは、腰砕けになった王に冷めたまなざしをやるだけでした。
「きみを殺して、この国を終わらせたい」
ひっ、と王は悲鳴を上げます。マックスくんは意に介しません。
「でも、この国は――ジャンヌやみんなが、命懸けで守った場所だから」
ジャンヌに唆されたジャン・ジャック=ピエールや、幕僚会議でジャンヌに言い負かされたジル=ド・レイ、深窓の令嬢だったアンナ嬢までが後方として戦に赴いた。


それは、みんなが暮らすこの国を守りたかったから。

「だから、この国を殺すのは、なしにします」
マックスくんの言葉に、王はへたりこみました。
「ぼくは、この国を去ります。この国を壊さないように」
友人の多い地だけれども、去らなければ哀しくて、なにもかも壊したくなるから。
「きみとは絶交です。…さようなら、シャルルくん」
そう告げて、マックスくんは窓から外へと飛び出しました。


彼の行方は、それきりわからなくなりました。

ブログ気持玉

クリックして気持ちを伝えよう!

ログインしてクリックすれば、自分のブログへのリンクが付きます。

→ログインへ

なるほど(納得、参考になった、ヘー)
驚いた
面白い
ナイス
ガッツ(がんばれ!)
かわいい

気持玉数 : 0

この記事へのコメント

この記事へのトラックバック