はやくはやく



最近、彼女とふと視線が合っただけで、壮絶に恥ずかしくなってしまう。大人は「中2病」だとか言って嗤うけど、当人は本気なんだ。


本気でぼくは、きみに恋をしている。


「ねえ、観月さん。最近、跡部さんが変な遊びを考えたみたいですよ」
「ストリートテニスの大会のことですか? 偵察するのがめんどくさいから、お金使って全国大会前に情報収集しよう、なんて魂胆でしょう。もっとも、我が聖ルドルフはミクスド以外は全国大会には出場できませんでしたから、関係ありませんけど」
「もう! ひねくれた言い方するー!」
「ぼくはこういう人間なんですよ。知ってるでしょう? さあ、足出して。練習の後はちゃんとマッサージしないといけませんから」
「あ! それなんですけど、今日はあたしが観月さんにマッサージします!!」
「…きみなんかに任せたら、ぼくの身体がおかしくなります。河村くんのラケット吹っ飛ばす女子プレイヤーなんて、全国探してもきみくらいですよ」
「ええー! そうかな?那美ちゃんや鳥取さんなんかもしょっちゅうやってると思いますけど…」」
「彼女たちはテクニックで飛ばしてるんです。きみみたいに馬鹿力で押してるわけじゃない」
「うーん。でも武蔵さんはマッサージ上手だねって言ってくれたんですけど…」
「…その武蔵くんとやらは、もしかして桜臨中の鏡見武蔵くんのことですか?」
「さすが! 転校生のこともチェック済みなんですね。このまえ朝練してたらジョギングコースが一緒で、何回か打ち合ってもらったんです」
「…なら、鏡見くんにマッサージしたらいいじゃないですか。それじゃあ、ぼくは失礼します」
「わ! ちょっと待って、観月さん! なんで突然機嫌悪くなるんですか!」
「ほお? 機嫌が悪いことはわかるようになったんですね。 大した進歩です」
「武蔵さんには、専属のコーチがいるんですって! だから、次はマッサージはしなくていいって言われたんです」
「…それで、代わりに、ぼくですか?」
「うーん…。代わりって言うか、本番? いつも観月さんにしてもらってましたから、たまにはあたしがしたかったんです。そのことを武蔵さんに話したら、一度試しにやってごらんって」
「…そうですか…」
「でも観月さん、あたしにされるの、やなんですよね…」
「ま、まぁ、練習してきたのなら、成果を確かめるべきでしょうね。いいでしょう。それじゃあ、お願いします」
「はい! じゃあ足出してくださいね! わー、観月さん、色白ーい」
「セクハラですよ。…そう、上手ですね」
「……」
「? どうかしましたか」
「な、なんか恥ずかしくなってきました…!」
「!!!」
「あれー? 武蔵さんにした時は平気だったのになぁ」
「…そうですか。それでは、残念ですがマッサージは交替しましょう」
「えへへ。お願いします! あれ? 観月さん、今度はとっても機嫌が良いですね?」
「んふっ。わかりますか?」
「はい! でも、なんでですか?」
「それは秘密」
「えー!」


ようやくぼくを意識してくれるようになったんだな、と思えば思わず顔が綻ぶというものだ。

ああ、どうもぼくは、本当に彼女が好きだなぁ。

早く、彼女はもぼくを好きになってくれればいいのに。


「はやくはやく」 Closed.

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