マックスくん、失礼な少女とさいかいする

「そこまでよ」
りんとしたこえが、あたりを支配して、その場はしんとしずまりかえりました。
こえのぬしは、マックスくんよりずっとたかい場所にいます。
まつり用にたてられた、簡易の砦の頂上。
きんいろのながいまき毛がかぜになびいて、さらさらとひかります。ほっそりしたからだには、
たっぷりの威圧感がただよっていて、白魚のようなおててには、おとこたちが狩に使う、がっしりとしたゆみがにぎられています。

まるで、おおさまのような、いげんある少女が、そこにいました。

あんまりきれいなので、マックスくんはびっくりしました。まるで、ひとではないかのよう…。

あれ? まえにもこんなこといったよね。

きれいな少女は、尊大で、ちょっぴりたのしそうなこえで男たちにいいました。

「そこのおっちゃんの屋台を壊したのはだぁれ?」
こえは天上でつかわれる剣鈴のおとのように澄んでいます。
「今すぐおっちゃんにあやまって、屋台をもとに戻しなさい。さもないと…」
少女はゆみをかまえました。あわてるおとこたち。
「ま、待てって、ジャンヌ! 謝る! 直すから…!」
どうやらおとこたちが改心したようです。こころなしか、かおが青ざめています。
少女のやくめは、これでおわりのはず。
なのに少女は、むざんにもこう言いました。
「きっこえなぁい♪」

ぎり、とちからづよくひかれた弓矢は、らんぼうした男のひとりのかおをかすめました。
矢がはなたれた瞬間に、すこしでも動いていれば、かおの真ん中に矢羽がはえていた
ことでしょう。 ほか数名にもたてつづけにおなじ調子でゆみをひきます。
あざやかな、撃退劇でした。

おとこたちは泣きながら屋台を直してにげてゆきます。
ちかくでみていたジャン青年は、呆然とたちつくしているだけです。
屋台のおじさんがおおごえをあげました。
「くるぁあ!!! ジャンヌ! お前またそんなもん持って村うろつきやがって! 大人しく嫁に行け!!」
たすけてもらったはずなのに、なぜか怒っています。そんなおじさんを見下げて、少女は高笑いをはじめました。
「あっはっは! おっちゃん、それ面白い冗談ね!」
「冗談なわけあるか! このじゃじゃ馬が! 村の人間がお前が嫁ぐのを心待ちにしてんだよ! 早く村ァ出てけ!!」
「あたしが嫁に行ったら、アンナが独りぼっちになっちゃうわよ」
「清々する、とおっしゃるにちげぇねぇよ! おい、聞いてんのか、あァ!? ジャンヌ!」
少女はきいていないようで、高笑いをしながら砦から姿をけしました。

まるであらしのおうさまのようです。

「へんなひとですね」
そしてたいへん失礼なひとです。少女は、さきほどマックスくんをうさぎよばわりした、女の子だったのです。
ジャン青年はつぶやきました。
「彼女だ」
「はい?」
「俺の捜し人」
マックスくんがなにかいう前に、ジャン青年は失礼な少女を追いかけていきました。

「やれやれ、ですね」
マックスくんはちょっぴりハードボイルドぽく笑って、ジャン青年を追いかけることに決めました。

ながいひとやすみになりそうです。

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