わがまま


復活

今日は朝から不思議なことだらけ。
犬が朝から私にガムをくれたし、千種は「虫歯になるから」ってあまり出してくれないホットチョコレートを作ってくれた。
学校に行くまで、2人は歩幅を合わせて歩いてくれたし、帰りは下駄箱で待っててくれて、コンビニで麦チョコを買ってくれた…。

「どうしちゃったの…?」
夕飯どきに、思い切って聞いてみた。すると2人とも、ぷいとそっぽむいてしまった。
「犬? 千種…?」「しらねーびょん!」
「めんどい…」
私、何かしたかしら?
助けを乞うように、食卓のお父さん席に座るひとを見る。そのひとは、とても愉快そうに微笑んでいた。
「クフフ…。みんな、クロームのことが好きなんですよ」
「ち、違うびょん!骸さん!」
「今日はクロームの誕生日ですから、お祝いしたいんです」
「…たん…じょうび…?」
骸様の言葉を反芻して、私は固まってしまった。
「なんだ、お前忘れてたんら?とろくせー」
うん…。忘れてた…。
「だって、今まで一度も、誕生日お祝いしてもらったことない…」
だって、誕生日って、生まれて来てありがとう、良かったねって、言ってもらう日なんでしょ? 私、言ってもらったことないわ。
一瞬、食卓はきまづい静寂に包まれた。それを破ったのは、お父さん席に座るかの人。
「おや、それじゃあ、特別盛大にお祝いしなくては。今日はクロームのわがままを何でも聞いてあげますね」
私はびっくりした表情で骸様を見つめた。
「…何でも…?」
「ええ。お前が望むなら、僕たちは今から小さな国のひとつやふたつくらい乗っ取ってきますよ」
事も無げに言われた言葉は、きっと本気だ。でも、私の望みはもっと途方もない。
「いっ…一緒にいてっ…!」
皆がぽかんと私を見るけれど、私は望みを口にするだけで精一杯。こんなわがまま、言うのは初めてだわ。
「一緒にいて…。骸様も、千種も、犬も、一晩私と一緒にいてっ…」
ああ、めまいがしそう。だめって言われたら、どんな表情をすればいいんだろう?
私が瞳を閉じてぐるぐると考えこんでいると、すぐ近くに人の気配。
そっと目を開けるのと、骸様が私をお姫様だっこするのは同時だった。
「骸様…! 私まだご飯食べ終わってない…」
千種手製のスペシャルハンバーグは、まだ半分も残っているのに。
「あんまりお前がかわいいことを言うから、ついね」
そう言って、骸様は私のおでこやほっぺにたくさんのキスを降らせた。
「いくらでも側にいますよ。お前が嫌だと言っても離れません」
「そんな日はこないわ…」
それだけは、確信を持って言える。そう言うと、骸様はまたほっぺに口付けてくる。
「お前が生まれて来て、僕はうれしいですよ」
「…ほんと…?」
「ええ、もちろん」
私は思わす骸様に抱き付いて泣いてしまった。
ああ、そんなことを言ってもらえる日がくるなんて!
「私、死んじゃいそうです」
「それは困りますね。お前には、もっとわがままの仕方を教えてあげなくてはいけませんから」
「?」
「こんなの、わがままなんて言わないんですよ」


その後、骸様が買ってきてくれた特大チョコレートケーキを食べて、私のおねだり通り、4人一緒に寝た。
しあわせだわ。骸様。私を拾ってくれて、ありがとう…。だいすきです。


おまけ

「ほんとはクロームと2人きりで夜を過ごしたかったんですがね!」
「どうせ2人きりになってもほっぺにちゅーくらいしかできないくせに…」
「何かいいましたか、メガネ!!」
「この人、大概めんどいよ」

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