お母さんは心配性



千種は買い物帰りの道を、一人ぽてぽてと歩いていた。
今晩のおかずはハンバーグ。骸様も犬もクロームも、みんなそれぞれ好き嫌いが激しいから、メニュー作りはいつも苦労する。絶対に今日は、犬にもばれないくらいにんじんを細かく切って、三人ともに食べさせる…!!
固く心に誓いながら、四人で暮らすマンションの扉を開く。
「ただいま…」
いつもなら三人で出迎えてくれるのに、今日は誰も出てこなかった。おかしい。三人の靴はあるから、出かけてるわけでもないのに。何より、犬も骸様もいるのに、静かすぎる。
いぶかしく思っていると、ある部屋の前で、体育座りをしている犬をみつけた。
「何やってんの、犬…。骸様のおしおき?」
話しかけると、俯いていた顔を上げる犬。途方に暮れた目をしていた。
「かきぴ、なか…」
「何? 骸様の部屋がどうかした?」
犬が座りこんでいるのは骸様の部屋の前。またクロームにいたずらして怒られたのだろうか。
「耳、すましてみ」
盗み聞きかよ。でも犬は身体能力高いから、こんな扉一枚じゃ、自然と耳に入ってきてしまうだろう。気は進まないが、扉にそっと耳をあてた。


「ん、いいですよ…。クローム…気持ちいい…」
「は、はい。骸様…。結構、体力がいるんですね…。わたし、もぅ…」
「まだだめですよ。僕はまだ満足してないんですから。ほら、ここ、触ってみて…」
「あっ…骸様…。すごくかたいです…。大丈夫なんですか?」
「クロームが頑張ってくれたら、すっきりしますよ。ああ…そこ、もっと…」
「はぁ…っ、骸、様っ…」


ごがしゃーん!!!

「わー! かきぴが暴走メガネになったー!!!」
「なに、してんですか骸様…。うちの子はまだティーンだから、そういうことは10年後くらいにしてくださいとっ…!!!」
千種の眼鏡が怒りで光った。自室の扉を千種にズタズタに破壊されて、なお骸は薄く微笑んだ。自らの身体に乗っている、クロームの小さな身体を抱き上げて床に降ろしてやる。
「おやおや、千種は早とちりさんですねぇ」
「何が…!!」
手塩にかけて育てたかわいい娘が、こんな変態ドSナッポー王にいいように仕込まれるなんて、冗談じゃない!!
怒り狂う千種の繰り出す殺人ヨーヨーをひらひら躱す骸。
く、忌々しい…!
全力を出しかけた千種を止めるため、とてとてと近寄ってきたのは、下着姿のクロームだった。
「千種、待って。わたし、骸様にお願いされて、マッサージしてただけよ…」
「…マッサージ…?」
「うん。だから、わたし千種の言いつけ、ちゃんと守ってるわ。身体を大切にって、約束だもの…」
一生懸命語りかけてくる小さな声に耳を傾け、怒りが静まっていく。
「…変なこととか、嫌なことされてない?」
「骸様は、そんなことしない」
「ほーらみなさい。千種、お前は心配性なんですよ」
「あなたに対抗するならここまでしないと、意味ないでしょう。…クローム」
「なに?」
「さっき、骸様のお願いっていったよね」
「うん」
「下着姿でマッサージしてって言われたの?」
「うん」
「ナッポー!!!!!」

「だってその方がやらしかわいいじゃないですか」


今、第二戦が幕を上げた。

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