思春期の二人に雷が落ちる

雷が落ちる音が、窓をびりびりとゆらす。


強い雨音が頭に響く。怖いなんて思うはずもないが、なんとなく寝付けずに、骸は数度目の寝返りを打った。
ふと、静まった気配の中で扉越しに人の気配を感じる。この家に、こんな小さな気配を持つ者は一人しかいない。
「クローム…?」
名前を呼んでみると、おずおずと扉を開く、小さな影。
「…骸、さま…」
骸は小さく微笑んで、こちらに来るようにと両手を広げた。吸い寄せられるように、クロームは骸の腕の中へ納まる。
「雷、怖かったんですか?」
小刻みに身体を震わせこくりと頷く、自分の半身。
この少女は、些細なことに、驚くほど怯えることがある。どんな敵と戦っても、こんな風に俯いて身体を震わせたりはしないのに。
骸はゆっくりと背中をなで、優しい声音で語りかけた。
「大丈夫。怖くなんてありません。怖いものは、みんな僕が消してしまいますから」
クロームは不思議そうに、大きな瞳で骸を見上げた。

愛しい娘。僕の、かわいいクローム。

骸は、そっと頬にくちづけた後、クロームの耳朶を甘がみした。途端、真っ赤になるクローム。
「むっ…骸さまっ!?」
「クフフ。かわいい反応ですね。クローム」
「骸さま!」
耳を押さえて涙目になっている彼女は、まるで小動物のよう。愛しくて仕方ない。もっとかまいたかったが、これ以上は自分の理性が怪しいのでやめておくことにする。
「そんなに警戒しないで。どうです?雷、まだ気になりますか?」
言うと、クロームはぱちくりと瞳を見開いて、蚊の鳴くような声で
「…もう、大丈夫です…」
と言った。

ほんとは、もっと別の方法で雷を遠ざけたかった。
例えば、互いのくちびるが重なる音や、ベッドの軋む音。甘く、自分の名を呼ばせて、一晩中自分しか感じないように…。

まだ、彼女には早い。

赤いままの頬に再びくちづけて、ベッドの中に引きずり込んだ。
「むっ、骸さま…」
「いいコは寝る時間ですよ。今夜はここで眠りなさい。僕が一緒にいれば、雷なんて怖くないでしょう?」
クロームは、恥ずかしそうにこくりと頷いた。腕の中で、甘えるように体重を預けてくる。すぐに睡魔が襲ってきたのか、クロームの大きな瞳は、すでに半分ほど落ちている。
「む、くろ、さま…」
「なに?」

「…すき、です…」

それだけ言って、クロームは今度こそ夢の世界へ旅立った。

…まったく、この娘は…
こんな不意打ち、卑怯だ。

側にある小さな身体をぎゅうっと抱き締めて、ちゅっちゅと音を鳴らしながら頬や首筋にくちづけまくる。

…僕の方が、眠れなくなってしまいました…。

そういえば、この身体はまだ思春期なんだよな、明日は大丈夫だろうか、なんてしょうもないことを考えた。

…僕ががまんできるうちに、早く大人になってくださいね? 僕のかわいいクローム…。

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