「セント・ヴァレンティヌス」


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「ねぇリサ。急にケーキを作るって言い出したけど、どうしてぼくまで一緒につくるの?」
 ガスパールは準備万端でエプロンを着用しているリサを見て言った。
「いいから、ガスパールはわたしの言ったとおりに測って入れて混ぜて焼けばいいの。さあ、はじめましょう!」
 リサの家のボウルに卵を割って入れて、粉を入れて、バターを溶かして入れて。

「だめよ! ガスパール! そんなふうに卵割っちゃ!」
「ガスパール! 粉ふるって」
「そんな風に混ぜたらおいしくならないわよ、ガスパール」
「ガスパール。わたしのもかき混ぜてー」

「リサ。そんなにいっぺんに言われたら、ぼくわからないよ」
「いいからわたしの言うとおりにするの!」

 ガスパールはよくわからないながらも一生懸命リサの言うとおりにした。何とか生地を型に入れて、オーブンに入れることが出来た。焼きあがるまでにフルーツを切って、クリーム作って。あーあ。黒い毛が粉で真っ白になるし、クリームで手はべたべた。あ、リサもほっぺにチョコレートクリームがついてる。せっかくキレイな白い肌なのに。
「リサ。顔についてるよ。ぼくがとってあげる」
 ガスパールがタオルでリサの顔をごしごしと拭ってやると、リサはちょっとご機嫌になった。
「ありがと、ガスパール。さあ! 生地が焼けたから、あとは飾りつけよ」
 うーん。上手くクリームが塗れない。リサは器用にクリームを塗って、イチゴで飾り付けているのに。
「リサ。ぼくの、あんまりおいしそうじゃないや」
 ガスパールはちょっと落ち込んだ。リサに(無理やり)誘われたケーキ作りだけど、できないとなるとくやしい。リサにも出来るのに。あの(むちゃくちゃな)リサでも・・・。
「ガスパール。見た目は大したもんだいじゃないのよ。大事なのはきもちだって、お菓子教室の先生が言ってたわ」
「きもち?」
「あげる人のこと、どれだけ好きかって気持ちがだいじなの」
 ガスパールは考えた。だったら大丈夫。気持ちはいっぱいこもってる。

「できたわね。ガスパール!」
「うん!」
 リサのはきれいなイチゴショートケーキ。ガスパールのはちょっと不細工なイチゴのチョコレートケーキ。
「はい、リサ。これあげる」
 リサはきょとんとしたかおをした。次にガスパールの手の中のケーキを見る。
「リサのほどきれいじゃないけど、できたらリサにあげるって決めてたんだ。だからあげる」
「・・・ありがと」
 リサの耳がちょっとだけ赤くなった。でも嬉しそうで、ガスパールは大満足。
「ぼくのあげるから、リサのもぼくにちょうだい?」
「え?」
「だって、バレンタインでしょ。ぼく、リサからプレゼントほしいな」
「・・・しょ、しょーがないわね。じゃあ、しかたがないからあげるわ」
「うん! ありがと! リサのケーキおいしそうだね」
「・・・ガスパールのも、ちゃんとおいしそうよ」
「リサがおしえてくれたからだよ」

 リサは何だかいたたまれなくて、身体が縮んでしまう。本当は、バレンタインのプレゼントが渡し辛くって、無理やりガスパールと交換するつもりだったなんて、今更言えやしない。

 そんなことも、ガスパールはわかっていそうだけれど。

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