うさぎ、さかいをこえる。

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フランスの田舎町に、一匹のうさぎがいました。うさぎはうさぎらしく、ぴょこぴょこと動きながら、それなりにしあわせに暮らしていました。

ところがある日、うさぎは気付きました。

世話してくれている家の末っ子が、近所の悪ガキにいじめられているのです!

うさぎは何とかしたいと思い、一番古くからこのうさぎ小屋にいる長老うさぎに相談しました。
ところが長老うさぎは、首をよこに振るばかり。

「うさぎは、ひとをたすけられないのだよ。」
「どうしてなのですか?どうしてうさぎはあんりくんをたすけられないのですか。」

アンリくんは、末っ子の名前です。

「それが、うさぎとひととのさかいなのだよ。さかいをこえれば、うさぎはうさぎでなくなるのだ。ひともまた、さかいをこえればひとあらざるものになる。」
「なぜなのですか。なぜないているひとをたすけられないのですか。」
「さかいがあるからだ。」
「さかいとは、なんなのですか。さかいとは、だれがつくったのですか。」

長老は何も言いません。うさぎは憤慨しました。

「そんなもの、ぼくにはひつようありません。ないているひとがいるのに、さかいなどみえません。」

うさぎはそう言って、その日からアンリくんを助けるために特訓を重ねました。

腕立て伏せ。腹筋。背筋。反復横とびはとっても得意!
来る日も来る日も、うさぎは境を越えようと、頑張りました。

アンリくんは今日もいじめられていました。
アンリくんは、おとといもいじめられていました。
アンリくんは、さきおとといもいじめられていました。

ずーっとアンリくんはいじめられていました。
そのうち、アンリくんはうさぎを置いて、別の街に引っ越してしまいました。

うさぎはショックでした。間に合わなかったのです。アンリくんを、いま、自分が助けることが、
できなかったのです。
うさぎはおいおい泣きました。まんまるいお月様が、なくなるまで泣き続けました。

そして、うさぎはまた特訓しはじめました。次に会う人間が、アンリくんのようでも、今度は助けられるように。うさぎは目を真っ赤にしながら特訓しました。

そのうち、うさぎの目は青くなって、二本足で立ち、人の言葉を使うようになりました。

ある日、うさぎ小屋のうさぎが、青い目のうさぎを見て言いました。

「きもちわるい。」

うさぎはもう、泣きません。ただ、悲しそうに耳を垂らすだけです。長老は言いました。もう、2代目の長老です。

「うさぎのさかいをこえるものよ。もう、おまえはうさぎごやにはいられない。なぜなら、もううさぎではないからだ。」
「はい。ぼくは、ないているひとをたすけるために、うさぎをやめました。」
「こうかいはないのか。」
「はい。そんなものは、おつきさまにおいてきました。」

そうして、うさぎはうさぎではなくなり、マックスくんと名乗って世界に旅に出たのです。
西暦1300年のおはなしです。


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