マックスくん、旅にでる。


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 マックスくんがシャルル少年のおうちに滞在して、2週間がたちました。

「マックスくん。彼らはいったい何をしているの?」
 シャルル少年がまどのそとを見ながら、マックスくんに話しかけました。マックスくんは、お昼のにんじんを食べながら紅茶をのんでいるところでした。
「シャルルくん。ごはんはおちついてたべなければいけません。」
「うん。わかってるよ。でも僕はもう食べてしまったんだもの。」
 マックスくんはしかたないと、シャルル少年が眺めていたものを横目でみました。
「あれはきしですよ。」
「知ってるよ。国を守る騎士だ。でも、どうして外であんなに訓練してるの。たくさん荷物を運んでいるし、馬もたくさんいる。」
「たたかいにいくのです。きしはそれがおしごとです。くにのためにいのちをかけるのです。」
「だれと戦うの?」
「イギリスです。しかし、じきにちがうあいてとたたかいます。」
「だれと戦うの?」
「こくみんです。」
 シャルル少年は、複雑な表情をしました。よくわからないとつぶやきました。マックスくんは、おみみをふりふりさせながら微笑みました。
「あなたのおみみには、まだとおいこえでしょう。しかし、ぼくのおみみにはとどきます。ぼくのおみみには、ふあんにおもうひとのこえがきこえます。いずれかなしむひとのこえがきこえています。シャルルくんには、まだきこえませんが、いずれきこえるようになります。」
「うさぎは耳がいいんだね。」
「いいえ。ぼくはマックスくんです。」
「マックスくんは、とても耳がいい。僕も耳がよくなれるかなぁ。」
 マックスくんは、青いおめめをほそめて微笑みました。
「そうなってほしいですね。シャルルくんには、おみみがよくて、なんでもよくみえるひとになってほしいですね。」
 そういって、マックスくんはのこりのにんじんを食べて、紅茶をのみほしました。そして、食事台からぴょこりと飛び降りました。
「ぼくは、シャルルくんとおわかれしなければなりません。」
「えっ?どうして?もっと一緒にいて、お話してよ。僕、マックスくんのお話好きだよ。まるはだかにされた羊さんの冬の過ごし方のお話の続きは?」
 マックスくんは、微笑んでくびをよこにふりふりしました。
「ぼくにはぼくのやるべきことがあります。シャルルくんにも、やるべきことがあります。」
 シャルル少年は、涙をうかべました。
「何をするの?」
「かなしいひとをたすけるおてつだいをします。ぼくにできることは、とってもささいなことですが、それでもあきらめたくないのです。あきらめたら、それはただのうさぎです。マックスくんではありません。」
 シャルル少年のおめめは、大雨です。ほっぺは涙で川ができています。
「シャルルくんも、あきらめてはいけませんよ。できることを、あきらめてはいけません。」
 シャルルくんは、しゃっくりをあげて泣きはじめました。
「おわかれです。」
 そういって、マックスくんは5階のまどからぴょんと飛び降りました。

 シャルル少年は、大雨でくもった瞳でそれをみおくりました。
 「さようなら」も、声になりませんでした。

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