「ノエル」

 
 リサに「これ混ぜてね」とか言われたり、「粉買ってきて!」って言われたりして、なんとか作り上げたブッシュ・ド・ノエルは、それなりにおいしそうに出来上がった。

「すごいや、リサ!本当に料理教室の先生に筋がいいって言われてたんだね!僕、嘘か勘違いだと思ってたよ!」

そう言った瞬間、リサが力いっぱいボディーブローを僕のみぞおちに叩き込んだ。
むせる僕。

「・・・ごめん・・・ごほっ」
「聞かなかったことにしてあげる。」

僕はあれ?と首をかしげた。リサが僕の余計な一言に対して、こんな優しい言葉を言ったことはあまりない。

「どうしたの、リサ?」
「別に。」
 リサはぷいとそっぽを向いて、ブッシュ・ド・ノエルをリビングのテーブルへ運んだ。僕は慌ててすっかり汚れた自分のエプロンを外した後、僕のと同じくらい汚れたエプロンを外してあげた。リサは黙って、僕がエプロンを外すのを待つ。

「はい、リサ。」
「ガスパールはお皿とフォークを持ってきて。」

僕は言われたとおりにお皿とフォーク、ついでに切り分けるナイフを持ってリサの隣へ座った。
「ねぇ、リサ。おいしそうだけど、食べていいの?」
「何で?」
「リサ、ノエルに誰かに食べてもらうために、料理教室まで通ったんでしょ。」

急に料理教室に通いだしたリサに理由を聞いたとき、リサはそう言った。「プレゼントする」って。

「パパやママにあげなくていいの?」
「いいの!」

リサは不器用にブッシュ・ド・ノエルを切り分けて、僕に大きい方のケーキをくれた。珍しい。僕はとっても不思議に思ってリサを見た。リサの可愛い顔が、ちょっと歪んだ。

「ガスパールにあげるために作ったのよ。だからガスパールが食べていいの。」

僕はびっくりして、リサにお礼を言った。
「わあ!ありがとう、リサ!!」
お礼を言ったのに、僕はリサに殴られた。「じょーちょがない!」って怒った顔をした。

”じょーちょ”ってなんだろう。

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