シスターの少女 第10話


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薄暗い倉庫の中で、静は自分の思考に沈んでいた。

 茶色いくせっ毛。琥珀の大きな瞳。幼い顔立ち。小さな身体。

 ―――どこかで、会っていないか?

 静は先程出会ったシスターを思い出しては、自分の記憶に照らし合わせるといった作業を繰り返していた。
 どこかで、会ったのだろうか?自分は今まで、リオ派としてリオ=ログネスの一派にいて、幼い少女と会う事など、ありえないのではないか。一番幼かったのがリオ=ログネス本人くらいなのでは?いや。

 一人、いた。

 だが、彼女が、あの娘な訳がない。第一、印象が違いすぎる。

 考えすぎだ――

 そこで考えが一段楽した時、教会の方から2発の銃声が聞こえた。周りの部下が騒然とする。
「・・・“武芸団”は銃を使わない・・・となると、流れの賞金稼ぎでもやってきたかな。」
 静は誰にでもなく呟いた。大抵の賞金稼ぎになら、負けない自信があった。リオ派は、下仕官に銃の教育を徹底して行った。ここ何年か訓練したくらいの賞金稼ぎなど、造作もなく撃退できる。
 静は、立ち上がって表に出た。

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「はぁい。静。」
 噴水広場の近くの薄暗い倉庫から出ると、なるみが気楽に手を上げてあいさつした。 静は困った表情をした。
「・・・君か。何しに来た?」
「もちろん。あんたを確保するためよ。リオ=ログネス派の残党、指名手配犯の静さん。」
「シスター。君は一体何者なんだ?」
 静は、本人に直接聞いた。この引っかかりを、何とかしたかった。
「流れの賞金稼ぎよ。ただの。」
「それだけじゃないはずだ。俺は、多分君に会った事がある。」
「どうかしら。」
「ふざけないでくれ。」
 静は、手を上げた。それを合図に、町の中央部に位置する広場を囲むように⒛人ばかりの男たちが現れた。皆、静や龍石と同じくらいの歳の男だった。
「大人しく答えてくれ。君は、誰なんだ?」
「・・・あたしは、朝日なるみ。ただの賞金稼ぎよ。」
 その声を合図に、静の命令もないのに男たちがなるみに襲い掛かってきた。なるみは、スカートの中から愛銃S&W6インチマグナム『光太朗』〈こうたろう〉を取り出し、続け様に6発、打ち放った。銃声の分だけ男が倒れる。残り、⒕人。男たちが狼狽している隙に空薬莢をとりだし、実弾を素早く込めなおして狙いを定めた。それでも一番最初に向かってきた男が拳を振りかぶってくると、素早くそれをかわしてこめかみに銃口をあて、トリガーを引いた。絶命する男を横目で見ながら更に銃弾を男たちに叩き込む。
 あっという間に。そう、まさにあっという間にたくましい男たちの半数以上を、小柄な少女が血の塊に変えてしまった。
 空薬莢を取り出し、実弾6発を装填する。その落ち着き払った様に、生き残った者たちは怒りに我を忘れるよりも、恐怖で足がすくんだ。

 何か、悪い夢でも見ているような。鮮やか過ぎる殺人術だった。

「し・・・静・・・!」
 情けない声で男の一人が静に声をかけた。すでに腰が引けている。
「命令も出していないのに襲い掛かるからだ・・・!」
 とはいうものの、なるみがここまでの銃の使い手だとは思わなかった。それに、男たちの拳や蹴りを交わすときの鮮やかな体裁きや素早さ。これでは、まるで――
「暗殺者〈アサッシン〉・・・」
 思わず呟いたその単語に、静はどきりとした。
 なるみを見やる。
 なるみは、己で作った多くの死体の中にたたずみながら、顔色一つ変えていなかった。とても12歳の少女には見えない。恐ろしいほど、冷たい瞳をしていた。

 そして、その目を。静は見たことがあった。

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