シスターの少女 第9話


「い・・・!」
 気配のする方へ視線をやるなるみと龍石。向けた先の茂みから、5人の男が出てきて、少年の傷ついた足を眺めてせせら笑っている。
「よくわかったな。」
「気配を殺すって事を覚えてからほざきなさい。」
 なるみの言葉に、簡単に色めき立つ男たち。
「シスターが乱暴な事していいのかな?―――まして、乱暴されるかもしれないぜ?」
 男の一人が、下品な笑いを上げながら言った。なるみは相手にしない。

「主は、善人にだけ天国を用意するのよ。つまり。」

 なるみは黒い修道服のスカートを上げ、スカートの中から一丁の銃を取り出した。取り出す瞬間に撃鉄を引き、銃声があたりに木魂した。
 倒れる男。男の耳元に弾を掠めて脳震盪を起こさせたのだと気付いたのは龍石だけだった。その流れるような作業は、ほとんど瞬きするくらいの時間で行われた。続けてなるみは言い放つ。

「外見だけで景観を阻害する害虫みたいな異教徒どもは、地獄に落ちるのよ。」

「な、こいつ!銃を!?」
 混乱に乗じて、龍石が男たちに肉薄する。蹴りを男の一人の鳩尾に入れ、別の男の顔面に拳を叩きつける。どれも急所を突いた攻撃だった。身のこなしも素早い。そして、なるみも素早く撃鉄をもう一度引いた。ずどんっと銃声が轟き、またも男が気絶して倒れた。残るは一人。
 なるみは、その最後の一人の額に銃口を押し当てた。S&W〈スミス&ウェッソン〉6インチ357マグナムのリボルバーが鈍く光る。
「静は、どこ?」
「り・・・リーダーなら・・・町の噴水広場にっ・・・!頼む!殺さないでくれ!!」
「自分の命が惜しいだけなら、二度とリオ派に関わらない事ね。」
 なるみは、銃身をくるりと回して、グリップの部分で男の頭を殴り倒した。気絶する男。
「大丈夫?」
 なるみは、少年の傷を見る。ナイフは小型で、一本だけだったが見事に深く突き刺さっている。顔をしかめるなるみ。
 なるみが龍石を見ると、龍石は変な顔をしていた。
「なに?」
「シスターが拳銃ぶっぱなすのは、どうかと思ってな。」
「神に祈るだけでは、お腹はいっぱいにはならないってことよ。主も多めに見てくださるわ。」
「どーかなー。」
 まぁ、あんな神様なら確かに認めてくれそうだ、と龍石は亜麻色の髪の男を思い起こした。
 龍石は、荷物から包帯を取り出し少年の手当てを始めた。手も動かしながら、口も動かす。
「神様ってのは、色々と理不尽だよなー。」
「なにを急に。」
「俺は旅をしながら、地方の神話も集めてるんだが、こんな神様を知ってるか?旅の神様だ。その神様はえらく気まぐれで、気が向いたら困った旅人を助けて、また気が向くと旅人に悪戯するんだ。その神様は、最近大層暇してて、息子を一人地上に送り込んで、その息子の行動を眺めては楽しんでいるらしい。ちなみに、息子の方は困った人を放って置けない損な性分らしい。」
「なんだか、えらく人間臭い神様ねー。」
 少年も、その話に不思議そうな顔をした。
「ま、俺が何を言いたいか、というとだな。」
 あきれているなるみの茶色いくせっ毛の頭に手を乗せる。
「その気まぐれな神様が、気まぐれで助けてくれるといいなってことさ。」
 なるみはあきれた。
「キリスト教は一神教よ。日本独自な多神教の神に祈られたら十字架が廃るわ。それより、龍石。あんたこのコ連れて町に行って。」
「は?」
「この子をこのままにしておくのは危険だわ。放っておけば命にかかわるかも。」
「それはそうだが・・・。このぼーずを連れて行くのはお前じゃだめなのか?」
「ええ。ダメよ。」
 すくっとなるみは立ち上がった。
「これは、あたしの役目だから。」


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