シスターの少女 第8話

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 町から少しはずれた所に、墓地はあった。砂だらけだったが、それでもいくつかの緑が植わっていた。墓地は、広大に広がっていた。地上にたった十字架の数だけ、人がいなくなったのなら人が少ないのも理解できる。教会は、ずっと鐘が鳴りっぱなしで、次次と棺が運ばれてくる。
 なるみと龍石は少年の案内で、店の女を担ぎながら墓地までやって来た。穴を掘って、埋める。簡単なはずの作業は、気が乗らないせいか酷く手間取った。
 死体に土をかぶせた後、なるみは簡単に祈りを上げて、花を添えた。名前は、少年が刻んだ。恭子という名前だった。
「このまま、村を出て急いで大きな町へ行ったほうがいいな。」
 龍石は静かに少年に言った。
「それで、衛兵たちを連れてきて。“武芸団”を呼ぶでもいい。とにかく、俺たちにできることはそのくらいだ。」
 なるみは何も言わなかった。少年は、ただ泣くばかりだった。
「俺は神奈川に行く。お前はどうするんだ?」
 龍石はなるみに尋ねた。なるみは、泣き続ける少年を見やった。

「・・・あたしね、弟を探してるの。」
 ぽつり、となるみは言った。普段からは想像も出来ないほど小さな声だった。だから、龍石は懸命に聞いた。
「8年前に、生き別れになった弟。まだ、一歳にもなってなくて。あたしはそのとき4歳で。お母さんは死んで。皆、大人が死んで。あたしは、生きていくので精一杯だった。」
 それは。あの天から降ってきた災難の時代。
「生きてると思う。だから、探す。そのために。」
 そのためだけに、生き残った。
 でも。
「でも、あたしは生き残るためにいろいろした。だから、その後始末をしなきゃいけないと思ってる。」
「・・・朝日?」
 なるみは龍石に振り向きもせず、踵を返した。
「おい!お前、どうするんだ!?」
「あたしの副業。まだ言ってなかったよね。」
 背中越しに振り向いたなるみは、さっきの弱弱しさなど微塵もない、いつもの笑顔だった。
「賞金稼ぎ〈バウンテンハンター〉。あいつには賞金がかかってるわ。生死を問わず。」
「――って、お前あいつに勝てるのか!?ガキのくせに賞金稼ぎって・・・!」
「もちろん。だから、龍石はその子と一緒に町に人を呼びに行ってよ。」
「おいおい・・・!そんなん黙って行けるわけないだろ!?」
「行ってってば。あたし、わざわざ町まで倒した男引きずって行きたくないし。」
 自信満々に言うなるみ。龍石は渋い顔をする。
「お前は、ただ行き倒れてる所を拾っただけだが。」
「いわないでよ。そーゆーこと。」
「だがな、そんな危ない事一人でさせるわけにはいかん。」
「だからぁ!」

「止めん。だから、俺も行く。いざとなったら2人の方が逃げやすいだろう。」

 なるみは、きょとんとした表情をしたあと、困った顔をした。
「世話焼きなのねー。」
「まあな。」
 自分でもそう思う、と龍石は思った。
「ぼーず。」
 龍石は少年に目線を合わせた。
「そう言うわけだ。一人で町まで行って、警備兵を連れて来い。」
「おにいさんたちは・・・?」
「お前のねーさんの仇くらい打ってきてやるよ。」
「へえ。仇ってのは、誰のことだ?」
 別の声が、茂みからしたかと思えば、少年の足がナイフに貫かれた。



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