シスターの少女 第6話


「シスター。シスターは、故郷の村や町をでるとき、どんな気持ちでした?」
「・・・そうね。もう、あまり覚えてないかな。何せ小さかったし。」
 なるみが、育った所を出たのは6歳になるかならないかの頃だった。
「私は、恐いんです。皆で作ったこの村以外、私は知りません。昔の町並みがどうだったかさえ、今はもう覚えていません。だから、私たちの多くの村の人は、この村と共に死のうと思っています。そして、殺されました。」
「・・・おいおい。」
 龍石が慌てた声をだす。なるみは、鋭い視線で店の女を見ている。
「他の場所で、上手く生きていけるとは思えないんです。だったら―――」
「そんなので、あきらめちゃうの?」
 なるみは、鋭い視線のまま、強く言った。なんだか、怒っているようだった。
「小さくても、村を作ったあなたたちなら、きっと他でも上手くやっていけると思うわ。なんなら、また村つくればいいんだし。『宇宙からの贈りもの』事件を乗り切った人が、そんな情けないこと言わないで。死んだら、全部終わりなんだから。」
 一息に言って、なるみはうどんをすすり始めた。少し、のびている。
「おいおい。お前、あんまり乱暴な事をいってんじゃねーぞ。」
「だって、こういう最初から諦めてる人って、あたし嫌い!」
 なるみは取り付く島もない。龍石は溜息を吐いて、泣き始めた店の女を見た。
「まあ、言い方はどうあれ、俺もそう思う。なに。リオ派の事件なんて平安神宮に任せとけばそれなりに収まるさ。収まるまで、どこかの町でてきとーに働いて、落ち着いたらみんなで村に帰ってくればいい。それだけだろ?村っていうのは、人が生きていくためのところで、人が縛られる場所じゃないんだから。」
「で・・・でも、私たちは、何も知らない・・・」
「もう!知らないなら知ろうって、なんで思わないかなぁ!」
 憤慨した声をだすなるみ。大粒の涙を流して、女はなるみから目をそらした。
「あたしはシスターだけど、あなたのお葬式なんて絶対しないわ。自分から死ぬような結果をもたらしといて、天国に行けると思わないで。世の中そんなに甘くないのよ。」
「お前、言ってることむちゃくちゃだぞ?」
「いいのっ!あたし怒ってるんだから!!」
 勢いついでに龍石のラーメンにも箸をつけるなるみ。
「だって・・・そんなの・・・どうしたらいいって言うんです!?この村は、やっぱり救えないんじゃないですか!」
 女の逆切れに、なるみがキレて席を立った。
「あのね、自分で何とかしないうちからんなガキに文句―――」

 ぱすっ

 そんな気の抜けた音が聞こえたかと思えば。

 ぱたり。

 軽い音がした。
 目の前の女が、倒れた音。

 そして、龍石が机を蹴倒した。

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