シスターの少女 最終話


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 龍石は、数日前に出た砂の町から離れ、明石大橋を渡っていた。
 まだ陽は高く、海がきらめいて美しい。

「神奈川は遠いなぁ。空でも飛べりゃいーんだが。」

 旅の神は空は飛ばない。

 変なこだわりのある母からの躾だった。ただ単にからかわれているだけかもしれないとも龍石は思っている。

「飛べるんなら飛べば?そろそろ海は渦潮の時間だけど。」

「は?」
 背後から、聞き覚えのある幼い声。振り返ると、そこには薄汚れた黒い修道服と明るい茶色の髪。

「・・・朝日?」
「別にあんたに用はないわよ。財布探しに来たんだから。」
 妙につんけんしている。勝手に姿を消した事を怒っているんだろうか。
「なんだよ?」

「―――あたしが、気付かなかったとでも?」

「え?」
 まさか、俺の正体に気がついた?有り得ない。龍石は混乱した。

「・・・殺さなかったのは、自分でも甘いと思ったわよ。賞金首だったのに。」

 龍石はその事かとほっとした。
「なら、なんで殺さなかったんだ?」
「―――なるべく、殺したくないのよね。まあ、殺す時はためらわないけど。」

 もう、あたしは暗殺者じゃない。

 なるみはそう思っている。
 そして、なるみは龍石を見た。大きく息を吸う。

 精一杯、勇気を使う。

「・・・ありがと。」

 龍石はびっくりした。ものすごく珍しい事なんじゃないかと思って、なるみを見た。それに気付いて顔を赤くするなるみ。
「何よ!?あんた、わかってないわね!?許可を受けてない人間が殺しをしたら犯罪で、平安神宮とか二条城に連れて行かれちゃうんだからね!」
「何!そうなのか!?」
「当たり前でしょ!あたしだって賞金稼ぎ許可証〈バウンテンハンターライセンス〉持ってるんだから!!」
「じゃ、じゃあ俺、お尋ね者か・・・?」
「あれは、全部あたしがやりました、ってことにしておいたわよ!賞金も貰いたかったし!」
 ほっと胸をなでおろす龍石。なるみは赤い顔を、ぷいと横に向けて叫んだ。
「ああ。それにしても、やっぱりお財布ないなぁ!やっぱり大阪で落としたのかなあ。」

「・・・しょーがねーな。俺も大阪まで行くから、道案内しろ。それまでの食費が案内料ってことでどーだ?」

 なるみは、急に笑顔になって龍石を見た。
「ほんと?龍石っておっとこまえー!」
「まぁな。」
 なるみは龍石の足を思い切り蹴飛ばした。すねだったので涙目になる龍石。
「痛ぇ!!」
「ばーか。」
 小さな身体でとっとこ先へ進む修道少女を見やって、思う。

 そう言えば、賞金首を自分の手柄にしてるなら、金、あるよな?

「まぁ、いいか。どーでも。」

 龍石はなるみの頭をはたくために駆け出した。


 シスターの少女  closed.

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