シスターの少女 第15話


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「シスター。ありがとう。」
 少年は、足を痛そうにしているものの、元気そうになるみに礼を言った。なるみはにっこりと笑った。
「いやいや。それにしても、町まで行って帰ってくるだけで一日かかると思ってたのに、随分早く帰って来れたのね。」
 なるみが静を倒して、4時間後に少年は町の衛兵団を連れて戻ってきたのだ。リオ派の人間は、現在衛兵が連行している最中だ。
「うん。おにいさんが、僕を抱えて走ってくれたんだ。凄く速くて、あっと言う間だったんだ。」
 少年は幾分興奮したように言った。この元気なら、姉がいなくてもたくましく生きていけるだろうとなるみは思った。
「そーいえば、龍石は?」
「帰りは一緒だったんだけど、村に着いたらはぐれちゃって。あ、シスター。おにいさんって、面白いね。旅の神様の話をくわしくしてくれたんだ。あの話の神様って、女神さまなんだって。」
「ふーん。」
 適当に相槌を打って、なるみは少年を見た。

 自分の探している弟も、もうこれくらい大きくなっているかもしれない。こんな風に純粋に育っていればいいと思う。

「神様なんて、あてにしちゃダメだよ。やっぱ、もの言うのは自分なんだし。」
 忠告としてなるみは言ったのだが、少年は一瞬きょとんとして、笑った。
「龍石さんも、同じ事言ってたよ。」
「へぇ。」
 なるみは、なんとなく気恥ずかしくなった。
「それにしても、どうやってあの男たちを倒したの?」
 話題が変わったのに安堵して、なるみはいつものように適当に答えた。
「神の御力ってやつ?」
「へーえぇ。すごいねぇ。」
 純真すぎる少年の瞳に、なるみは腰が引けた。純粋すぎるのも、いかがな物かと思う。
「でも、こんなに家がぼろぼろになっちゃったね。・・・村の人が帰ってきたら大変だろうなぁ。」
「・・・そーね。」
 なるみはちょっとだけ冷や汗をかいた。

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 静は、生き延びたかった。少しでも。こんな時代でも。どんな手段を用いても。それは、リオ=ログネスの教えであった。

 そして。

 静は、火薬の量を多くした手製の弾を、サイズの合わない2.5インチマグナムに装填した。狙いを、少年と談笑しているなるみの頭に定める。

 町で唯一の狙撃場として格好の場所。岩石でできた岩場の影から、じっくりと狙う。気配を悟られないように、慎重に撃鉄を上げた。

「下衆が。」

 背後から、唐突に赤い影が現れた。そう。あまりにもいきなりで、それは人の域を超えていた。

 背後に気配を感じたと同時に。
 静の上半身と下半身は、真っ二つに分かれていた。

 赤い影がどこからともなくとりだした、赤い棒切れが、静の血で赤黒く染まっていた。

 人の域を超えた赤い影は、ぽつりと言葉を漏らした。

「全く・・・。まだ甘いな。あいつは。」

 砂ばかりの地で珍しい岩場の上から、赤い影は茶色い髪の薄汚れた幼いシスターを眺めた。
「あーあ。ほんと、俺ってお人よしだよなー。龍神母様〈ロンシェンネーネー〉は、今頃天界で面白おかしく俺を見てるんだろうなー。」

 気まぐれな、自分の母。旅の神、大地を統べる母なる神。気まぐれで、我がままで、祭り好きな、母。思い出して、思わず笑った。

「まぁ、“ミヨ”の情報の礼だと思えよ?朝日。」

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