シスターの少女 第3話

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街道沿いに位置するこの町は、全体として小さい。おそらく、町一周するのに歩いて一日もあればたりるであろう。町の中央には噴水と公園があり、公園のベンチからは鳥取砂丘が見える。公園の周囲には寂れてはいるが飲食店もあり、昼時の現在ならばもっと町の人々が集まってもいいはずだった。
 その、やけに人通りの少ない町中の道をなるみと龍石はたわいもない雑談をしながら歩き、宿屋の近くの食堂に入った。適当に座って店の女性にうどんとラーメンを注文する。
 なるみが水を一口口にして、大きく息をついた。
「あー。二日ぶりに食べられるわー!」
「特に怪我がないと思ったら、ただの栄養失調か。」
 あきれた声を出す龍石に、なるみはむっとなって反撃する。
「ただ、とはなによ。ただとは。栄養失調だって立派に気絶するのよ?あたしが実践してみせたじゃない。」
「偉そうに言うな。人に飯たかっといて。」
 なるみはなおも薄い胸を張った。
「――しょうがないじゃない!お財布落としちゃったんだもん!!」
「威張って言う事か?」
 龍石はもはやあきれ果ててなるみに視線もやらなかった。
「で?これからどうするんだ?財布落としたシスターさん。まさか、信者の施しとかアテにしてるわけじゃないんだろう?」
「まぁね。こんなご時世だし?神の御心を信じてはいても、やっぱり可愛いのは自分の御飯だし。あたし、だからいろいろ副業もしてるの。」
「へえ。どんな?」
「ないしょ。」
 可愛らしくウインクしてみせるなるみに、いよいよ溜息を吐く龍石。そんな龍石を意に介する風もなく、なるみはたんたんと話を進めていく。
「でね。この町にシスターの仕事でも副業の仕事のほうでも、どっちでも何かあればあたしはとりあえずそれで御飯が食べれて、次の町に向かえるってわけ。」
「なけりゃ野垂れ死に。」
「いわないでよ。ローティーンの女の子にそゆこと。」
 ちょっと遠い目をして汗を流すなるみ。実際、彼女はローティーンですらなかったが、そんなことを言っても明日の御飯に困るのは変わらないので流しておいた。
「ところで・・・」
 龍石は話題を変えた。あたりを見回す。
「随分、人が少ないんだな。もう、昼も回ってるのに。」
 食堂は、なるみたちが入ってきた時もいまも閑古鳥が鳴いている。いるのは、なるみたちと、地元の人間が立ち話をしているくらい。
「そうねぇ。あまり大きな街が近くにない、小さな町だから元々人は少ないんだろうけど。・・・ちょっと少ないわね。あ、そだ。おねえさん。」
 なるみは、注文していたうどんとラーメンを運んできた二十歳くらいの女性に声をかけた。恐らく、この店を経営しているのも彼女なのだろう。身体から、香水の代わりに様々な料理のにおいが漂っている。
「なぁに?あら、シスター?」
「うん。流れの。ところで、やけに人が少ないみたいだけど、皆して町に出稼ぎにでも行ったの?」
「・・・そ・・・それは・・・」
 なるみの問いにまともに顔色を変える店の女。しばらく瞳を泳がせ、意を決したような瞳をなるみに向ける。
「・・・ねえ、シスター?早くこの町から出た方がいいわ。」

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